黒田官兵衛が初めて知った茶の味

日本の人物の話

黒田官兵衛(如水・孝高)は、茶の湯が武将たちの間で流行りだした頃、刀も持たずに狭い部屋で人と席を共にするなど不用心きわまりないといって興味を示しませんでした。

ある日のこと、主人である豊臣秀吉から茶の湯に誘われました。他の者であれば断るところですが、主人の命には逆らえません。

仕方なく茶室に入ると、先に秀吉は待っていましたが茶の準備など全くしていませんでした。
そしておもむろに、次の合戦の密談を始めたのです。

茶の湯の席に誘われたものだとばかり思っていた官兵衛が困惑していると、秀吉はこう言いました。

「人の目のあるところでそなたを呼んで二人で話をすると、それを見た者は何かと疑いの思いを抱いたり、人にそれを吹聴したりするだろう。しかし、この茶室の中ならば、いくら二人でいようとも誰も疑惑を持つことがない。これが茶の湯のいいところなのだ」

これを聞いた官兵衛は、「私は、今日初めて茶の湯の素晴らしさを知りました」と秀吉の深慮に感心しました。
この日より、官兵衛は茶の湯を深くたしなむようになったということです。

大成するきっかけは、意外にこういうものかもしれません。

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